地方創生インターンTURE-TECH

 

地域の課題が、面白いほど人を成長させる。ソフトバンクのインターン生が、塩尻市のリアルな課題に触れ、解決へと導く「TURE-TECH(ツレテク)」

「誰も成し遂げたことがないことをしよう」
「脳がちぎれるほど考え、とことんやり抜こうぜ」
「変化が好き」「変革はもっと好き」
「言い訳しない人生にするんだ」

これらは、ソフトバンクTURE-TECH(ツレテク)のWebサイトに書かれているメッセージです。

その願いを叶える、「地域」という問題解決の舞台に、つれていく。

「TURE-TECH」とは、地域のリアルな課題に触れ、解決に向けたプランを市長に提案するまでを7日間でおこなう、学生のためのインターンシップ・プログラムです。

これまで「TURE-TECH」は、塩尻市、丹波市、八幡浜市で開催されてきました。塩尻市で開催されるのは今回が3回目。本記事では、2018年9月、長野県塩尻市で実施された「TURE-TECH」について、その様子をお届けします。

ビジネスの「体験」ではなく「実践」

「TURE-TECH」のプログラムは全7日間。最初の2日間は、東京での事前研修です。日本中から集まったインターン生たちは、プログラムの初日に初めて顔を合わせ、各課題ごとに少数のチームに分かれ、自分が向き合う課題に触れることになります。チーム編成は、1チームにつき学生6人、ソフトバンク社員2人、塩尻市職員1人。チームごとに、インターン生の「壁打ち役」として案のブラッシュアップの手助けをするメンターとなる社員と、メンタル面でサポートをする社員が入ることが特徴です。

塩尻市の職員が用意した、地域課題についての概要と今回のゴールがまとめられた仕様書。課題のポイントを的確にわかりやすくまとめるだけでなく、必要なデータを正確に用意するといった事前準備が必要となる。

 

今回の「TURE-TECH」のテーマは、以下の5つ。それぞれの課題の背景や目的について、簡単に紹介しましょう。

A 事業系食品廃棄物の利活用戦略
塩尻市の事業系可燃ごみは、前年対比で増加し、分別も進んでいないのが実情。生ごみ堆肥化の補助事業を展開しているものの、分別の手間や、補助の対象期間が3年で、経過後は自費負担となるという課題も。「生ごみ再資源化事業補助制度」が市内大型スーパーに導入され、持続的に生ごみの再資源化が継続されていくために、どのように解決していく必要があるか。

B ふれあいセンター多世代活用戦略
地域福祉の推進拠点「ふれあいセンター」は、高齢者が生きがいを持って、健康で社会的、経済的に自立し、地域社会に貢献することができる仕組みづくり、コミュニティの形成づくりを目指すためにつくられた。誰でも利用することができるものの、若年層の利用が少ない。若年層に利用してもらうためにはどうしたらよいか、若年層と高齢者をつなぐ仕掛けや仕組みを「ふれあいセンター」内にどう設計すればよいか。

C 北小野地区における定住化促進戦略
北小野地区は、子どもたちを含めた地域内交流が盛んだが、過疎化が急速に進んでいる。塩尻市と北小野地区が共同して資金を出し合い、子育て世代の定住へのゲートウェイ機能として「北小野地区若者定住促進住宅」が建設されたものの、利用した世帯のほとんどが地区外へ転出している。入居した世帯が北小野地区に定住し、結果として空き家や更地の利活用にも繋がるようにするためにはどんな施策が必要か。

D 移住定住促進若者還流プロモーション戦略
塩尻市では、民間企業のメンバーと共に地方の先進課題について行政施策立案を行う「MICHIKARA(ミチカラ)」から派生した地方創生インターンシップ、地域企業の経営革新を目的にしたNPO法人ETIC.の地域ベンチャー留学など、首都圏大学生をターゲットにした斬新かつユニークな取り組みを行なっているが、参加した学生のうち、移住定住に至ったのは1%というのが実情である。この確率・比率を上げていくためには、どのような施策を打つべきなのか。

E 子育て女性就業支援事業「Seed」受講者増加策
塩尻市では、先述の「MICHIKARA」で採択された子育て女性就業支援事業(「Seed」)として、産後の復職に対して「自信がない、不安である」と感じている母親のキャリアデザイン、ファイナンシャルデザイン、先輩ワーキングママとの対話を含む全10回の「ライフプランニングセミナー」を実施している。実際に第1クールが終了し、一定の成果が得られているものの、受講者は4名と伸び悩んでいる。セミナー受講者数が伸び悩んでいる原因は何か。対象者の参加率を増やすためには、どのような仕掛けが必要なのか。

ここまでで気づくのは、これらのテーマは、塩尻市のリアルな課題であるということ。これまで塩尻市につながりのなかったインターン生たちは、こうした生々しい地域の課題に、初めて直面することになるのです。

熱量が心のつながりをつくる

東京での事前研修が終わると、3日目からは、塩尻市での現地合宿が始まります。テーマごとに担当者やステークホルダーへのインタビューをするなど、リアルな現場に触れ、塩尻市が抱える課題の背景を知ることに。

リアルな声とデータから読み解き、市長への提案内容をまとめていきますが、4日目(つまり、塩尻市に入って2日目)の午後には中間発表をするというスピード感。インターン生たちは、インタビューを重ねるごとに課題が自分ごとになっていき、議論は白熱。課題の本質は何か。それに対して、どのような解決策が考えられるのか。夜になって、宿舎に移動しても議論は続きます。

現地合宿の会場となったのは、塩尻市市民交流センター「えんぱーく」。チームごとに集まると、自然とリーダーシップをとったり、プレゼンテーション資料にまとめるなど、次第に個性があらわれていきます。

 

議論が止まってしまったときなどは、メンター役のソフトバンク社員がホワイトボードの前に立って議論を整理したり、インターン生を一人ずつ呼んで、今どう思っているのか、こういう言い方をすると周りの人はどう思うか?など、サポートをするシーンも。

 

▼現地合宿スケジュール

1日目 事前研修
2日目 事前研修
3日目 現地合宿 塩尻市職員と顔合わせ、スケジュール立て、インタビュー
4日目 現地合宿 インタビュー、ワーク、中間発表(1)、ワーク
5日目 現地合宿 ワーク、中間発表(2)、ワーク
6日目 現地合宿 ワーク、市長プレゼン、懇親会
7日目 現地合宿 事後研修

中間発表では、SBイノベンチャー株式会社 事業推進部 部長の佐橋宏隆さん、ソフトバンク株式会社 デジタルトランスフォーメーション本部 統括部長/handy Japan株式会社 取締役の河本亮さんが、プレゼンテーション内容について的確なフィードバック、アドバイスを送ります。緊張感に包まれた中間発表でしたが、インターン生たちは、そんな状況も楽しんでいるかのように見えました。

 

1回目の中間発表を経て、課題の本質をもう一度読み解き直したり、不足しているデータを補うなど、提案内容を磨いていきます。5日目には、塩尻市副市長 米窪健一朗氏へ2回目となる中間発表。副市長からのアドバイスも含めて提案の最終調整をしたのち、6日目には、塩尻市市長 小口利幸氏へプレゼンテーションをおこないます。

インターン生も、ソフトバンク社員も塩尻市職員も、みんな「TURE-TECH」のTシャツを着て、市長へプレゼンテーション。

 

塩尻市市長へプレゼンテーションされた内容を少しだけ紹介すると、「北小野地区における定住化促進戦略」においては、空き家リノベーション事業のトライアルと、若者定住促進住宅の入居可能年数変更の提案。「事業系食品廃棄物の利活用戦略」においては、課題を再設定しつつ、“フードロス・アクションしおじり”として、ロス食材を飲食店で扱うしくみの提案も。

インターン生の提案を受け止め、ひとつひとつ丁寧に返答をする塩尻市市長 小口利幸氏。

 

そして、最終日は事後研修。この7日間にわたる「TURE-TECH」で何を学んで、何を感じたかを、しっかりと自分に刻むことで、働くとはどういうことなのか、自身やキャリアについて深く考えます。

参加して特に印象的だったのは、「TURE-TECH」に関わるすべての人たちの本気度。インターン生は、地域のリアルの声を拾うためにまちへ繰り出し、戻ってきては議論に続く、議論、議論、議論。ソフトバンクの社員も、塩尻市の職員も、方向性や考えるべきポイントを示唆するだけでなく一緒になって議論をするなど、会場全体が「熱量」に溢れていました。

生々しい地域の課題に触れ、その解決策を仲間と導き出す過程で、自分自身の可能性を知る。地域のなかに入り込むことで自分が当事者となり、脳がちぎれるほど考え抜く。そして、心を動かされたからこそ、本気で乗り越えたからこそつかみ取れる、ほかでは得られない大きな気づきを持ち帰る。「TURE-TECH」とは、地域課題を解決するだけでなく、関わる人を面白いほど成長させるインターシップ・プログラムなのです。

ビジネスに必要な熱量ってなんだろう?

「TURE-TECH」の始まりは、塩尻市と企業(ソフトバンク、リクルート、日本たばこ、オリエンタルランド、日本郵便、ANAなど)が連携し、市が抱える課題を民間の力で解決していくプロセスを通じて、次世代リーダーとしての素養を高めていく「地方創生協働リーダーシッププログラム(MICHIKARA)」にあります。

社員の成長の機会としての、実践の場。そうした場を用意する背景にはどんな思いがあるのか、ソフトバンク株式会社 人事本部の坂元翔さんにお話を聞きました。

ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進1課 課長代行 坂元翔さん

 

「TURE-TECH」は、インターン生にとって「生の課題に触れる実践の場、体験の場」である、と言う坂元さん。現場を見て、生の声を聞いていくうちに、想像していなかったような壁にぶつかる。そうした壁を乗り越える力は、社会で必要な力そのものです。

「学生の頃は、同学年の友人や、部活やサークル活動の友人など、自分と近い人と長い時間を過ごしていると思います。でも社会に出ると、年齢や価値観はさまざま。「TURE-TECH」でも、いろいろな価値観をもつインターン生が集まりますが、同じ目的を持って、現地の人の思いを知って課題が自分ごとになっていくにつれて、だんだんとチームビルディングもできていくんです。

そして、どれだけリアルな課題に触れられるかが重要だと思っていて。地方行政が今まさに困っている課題を目のあたりにすることで、社会に出る前に、働くことの意味に向き合うことができる。「情報革命で人々を幸せに」というソフトバンクの経営理念を、この塩尻市で、実際に体感してほしいと思っています。」(坂元さん)

今回の「TURE-TECH」では、実際に行政施策として採択された案件はありませんでしたが、これまでに実施された「TURE-TECH」で採択された案件は、課題15つのうち、5つ。

たとえば、塩尻市・奈良井宿の訪日外国人観光客をどう増やすかという課題に対しては、外国人向けのフリーペーパーを提案、作成。丹波市の廃校利活用という課題に対しては、廃校を抱える自治体と廃校での事業展開を考えている民間企業が交流・マッチングできるフェアを開催。企業スポンサーを集めるのもインターン生が実行したのだとか。

「市長や副市長をはじめ、関わるみなさんがみんなこのプログラムに意義を感じていて、関わる大人たちがみんな本気であるということが、インターン生を惹きつけると思うんです。学生だから、というのがどこにもない。提案も、アイデアに終わらせない。官民、学生協働で、リアルな地方課題について行政施策立案をおこなう場であることが「TURE-TECH」の魅力だと思います。

最終的にインターン生には、この経験を生かして社会や人のために役に立つような人材になってほしいと思っています。自分自身をしっかり見つめながら、自分がどう動いたらほかの人が動きやすいのか、結果としてチーム力が上がるのか。考える力、コミュニケーション力、話す力、誰かを動かす力。いろいろな力を身につけて、自信を持って社会に出ていってほしいと思います。」(坂元さん)

社会に出るということ。それは、誰かの役に立つこと、と言い換えることができるかもしれません。そして最後に坂元さんは、「学生の力を信じてほしい」と語っていました。僕たちが普段やっていてできないんだから、外から来た学生にできるわけがないと思わないでほしい、と。

「能力が高くて、当事者意識もある。経験がないだけなんです。実際にやってみないと学生の可能性を感じられないかもしれませんが、信じることができれば、ひょっとしたら解決の糸口が見つかるかもしれないし、それが市の未来を変えることになるかもしれません。」(坂元さん)

「TURE-TECH」において塩尻市の職員が大切にしているのは、ステークホルダーとしっかりつながること、確実に根拠のあるデータを伝えること、そして事業推進者として責任を持ってサポートをすること。

 

地域を変えること、変えていくことは、決して容易いことではありません。それでも、世代や職務といった垣根を超えて、当事者意識を持つことで、何かしらの化学反応がうまれていく。「TURE-TECH」には、誰かの役に立ちたい、本気さやその熱量が人を動かすといった、働くことの原点があるような気がしてなりません。

(Text:増村江利子)

この取り組みの
WEBサイトへ

ページTOPへ